【短編】大空に舞う一輪の花のように
しばらくすると二人は戻ってきた。
俺が、なぜか瞳の潤んでいる母を見ていると、
不意に、白衣を着た男が歩み寄ってきた。
そして、俺の前まで来るとしゃがみこんだ。
「寛太くんだね?僕は君を担当している医師の松田と言います」
俺の目を見ながらそう言ってくる松田という先生に、
俺は軽く頭を下げた。
「寛太くん…、先日トラックに跳ねられた事は覚えてる?」
俺は頷いた。
「そうか……。いいかい…?落ち着いて聞いてくれ……」
そう言うと、松田先生の表情は段々と険しいものになっていった。
「……寛太くん…、…キミの足はもう……――
ふと、母の目から涙がこぼれ落ちたのが見えた。
――……もう、…動かない…」