【短編】大空に舞う一輪の花のように
「寛太ー!写真撮ろうぜ!」
ケンが大声を出して俺を呼ぶ。
「おう!」
俺らは今、校庭にバスケ部で集まっていた。
俺は、ほんのりと漂う桜の香りをかぎながらふと思う。
――そう言えば、俺の人生が狂い始めたのはいつからだったかなぁ…?
それはよく覚えていないけど、
あの日、確かに俺の道は180゚狂った。
あのトラックに跳ねられた日に――
「おーい!お前ら写真撮るから、寄れ寄れ!」
――それでも、俺は諦めなかった。
また、夢に向かって努力しようって思えたんだ――
「お前ら最後なんだから良い顔しろよ〜!」
ケンに写真を頼まれた小太りの先生が、俺らに向かってカメラを構える。
――でも、それはみんなのおかげ。
今隣にいるケンや朝比奈さん、部活のみんな、沢波先生。
それに母さんや松田先生のおかげ。
みんなのおかげで、俺はまた夢を見れてるんだ……――
「じゃぁ行くよ〜」
――だから俺は、どんな風が吹いても立ち止まらない。
どんなことが起きても、歩き続けてみせるよ――
その時、強い風が吹いて、校庭の桜の花びらが一斉に舞った。
「はいチーズ!」
――この大空に舞う、一輪の花のように……。
《了》