小野さんとさくらちゃん
特別編 小野さんとさくらちゃんーcherryー
母が亡くなった。


三月初めの夜、元々心臓の弱かった母は、夕食の後眠るようにしてお星さまになった。


気持ちの整理もつかないまま、お通夜にお葬式と故人を送る儀式は慌ただしく過ぎていった。

お焼香をしに来てくれていた親戚のおばさん達が一斉に帰ると、家の中はしんとして、その静けさから逃げるようにして部屋に駆け込んだ。

悲しいとか、つらいとかの次元を超えて、心にぽっかり穴が開いたようだ。

目頭は溶けるほど熱いのに、涙は一粒も流れない。

小さい時からずっと食べてきた母の手料理は、もう出てこない。

さくらちゃんと呼ばれることも、もうない。


自分にはまだ学校生活が残っている。これから、父とどうやって暮らしていこうか…

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