小野さんとさくらちゃん
駄目じゃない。
というより、小野さんじゃなきゃ嫌だ。


「俺、小さい時からさくらのこと見ててさ、葬式の時のお前の顔、生きる希望失ったような顔してて、正直辛かった。」

「守りたい、お前を…」


背中に感じる彼の腕に力が入り、いっそう強く抱き締められた。


何か、言わなきゃ。


恥じらいながら目をあわせると、彼は小さく微笑んだ。

前髪から覗く優しい目が眩しい。

私は、この人が好き。


「ずっと…小野さんのことが、好きでした。」


胸の中で育ててきた思いを、今一生懸命言葉にする。


小野さんの右手が頭のてっぺんからから頬までを何度も往復してくすぐったい。

「もう、一人で泣くな。駄目な時はそばにいるから。」

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