小野さんとさくらちゃん
「お・の・さ・ん、何やってるんですか?こんな所で。」

試飲のバイトなんか絶対地元で出来ないよ、私には。

「うわ、最悪!!」

そう言った彼の顔には"声かけんな馬鹿"と書いてあって。

「最悪とは何だ。なんか、すごい頑張ってますね。」

「おう。これでも結構売れたと思うんだけど。さくらちゃんも1本買ってよ。」

ちょっと首を傾け目をぱちくりさせている小野さんはえさをねだる犬みたい。

この可愛さは卑怯だ。


「言われなくても買うつもりですよ、牛乳。」

「ほんと?さすがさくらちゃん、光園寺町の秘宝!」

この男、両手を挙げて喜んでいる…他のお客さんからの視線が痛い。

じゃあこれで失礼します、と言おうとした所で更に話しかけられた。

「ケーキ、作るの?」

「ああ、はい。それで牛乳を…」

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