日蝕

パセリ

「今日、お昼空いてる? ランチ行かない?」
 



 電話越しに聞く幸子の弾んだ声。どうして彼女は、声だけでその持ち前のエネルギッシュさ、芽衣の持ち合わせていないような生命力を他人に感じさせることができるのか。


 芽衣の長年の疑問。芽衣が低い温度の一定したところで定着しているのに対して、彼女はこうこうと燃え盛る炎のようにその活力を漲らせ、周りの人を巻き込んでいく。
 

 芽衣はソファの上に放り投げていたテレビのリモコンを拾い上げ、振り向いてテレビの電源を切った。


 東京大学だか京都大学だか、どこかの一流大学の教授が、医療分野で何かを抽出することに成功したとか、それが癌の治療の躍進に繋がることが期待されるとか。


 9時半をまわった頃の、いつも見ている朝の情報番組の特集に興味が持てず、チャンネル変えしようかと、リモコンに手を伸ばしかけた時に、テーブルに置いてあった携帯がバイブで震えた。
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