日蝕
「……う、うん」
「ちょっと、もっと何か言いなよ。余計悲しくなるでしょ。まぁ、そのNPOは実はNPOの活動が盛んなアメリカから来ている、Open Mind Association。通称、OMA。



日本ではマイナーな団体だけど、怪しいもんじゃないよ。アメリカでは有名なの。アメリカの大富豪が彼自身の巨額な資産を投じると共に、この団体を創設したって話。


目的は、世代や職業、できるなら国境をも越えて交流をもたせることを目的としている団体。だからそのツアーも劇的なほどに安いわけ。つまり、アメリカの方からお金がきてるからね。協賛も多いし」
 

 


 勢いよく流れ続ける雨の日の川のように休まず話を続ける幸子に、芽衣はぽかんとした。問答無用に押し流す。


 こういうことはよくあるのだが、幸子と芽衣が一緒に参加するならまだしも、芽衣だけが参加というのは我ながら非日常的、現実味がない。



 話を全部聞き終わる前に、芽衣は自分が行かないであろうことを悟っていた。自分はそういうタイプじゃない。


 それにいくら海外旅行にしては格安とはいえ、10万円を超える大金、バイトのみで生計をたてている芽衣にはそんな簡単に出せるわけがない。

「3泊5日という海外旅行にしては短期なのはね、暇な大学生だけでなくいろんな年代の人が参加できるように。


皆既日食観察というのを売りにしているけど、本当の目的は他の参加者との交流。ホテルの部屋も他の人と一緒になるし、登山も他の観光もグループ活動だからきっと新鮮で楽しいと思うわよ。


観光もね、ザクセンスイス以外に、ドレスデンでの観光もしっかり組んであるから、なかなか充実してると思う。旅行会社に勤めている、私から見てもね。どう?」
< 24 / 26 >

この作品をシェア

pagetop