日蝕
朝はアールグレイ。この習慣が始まったのはいつからだろう。
戸棚にある、赤で縁取られた六角形の缶に手を伸ばす。幸子がイギリスに行った時に買ってきてくれた紅茶。

 グツグツとお湯を沸かすケルトをぼんやりと眺める。
 幸子とはもう小学生からの長い付き合いだが、性格は芽衣とはまるで反対だ。幸子はタフでアウトドア派で活動的で、いつも有言実行。一方で芽衣はと言うと、怠惰で何をするのもマイペース。



 自分をリードしてくれる人についていく心地よさを好むタイプだ。けれど、幸子とは何かしら気が合うし、話もつきずにいつも楽しい。どうしてここまで仲良くなったのかも分からないし、きっかけも、もはや思い出せない。
 

 記憶力のよい幸子のことだ。きっと会ったら、いつもの強気な口調で指摘されるだろう。
――ほら、あの時、あそこで芽衣と会ったじゃない!

 




 幸子は今、何してるんだろう。そういえば、乗馬をするためどこかに出かけるって言ってたっけ。


 プレーンオムレツとベーコン。きゅうりとトマト、そして最近マイブームのセロリに塩と少しのオリーブオイル。これまた幸子にもらったバジルのペーストをたっぷりと塗ったトースト。
 




 ゆっくりと朝食を口に運びながら、携帯電話をチェックするとメールが二件。一件はお母さんからの、明日叔母の美智子さんが来るから一緒にランチに行かないかというお誘い。もう一件は、ずっと前に登録した占いのメルマガ。恋愛運は星4つ、仕事運は星3つ、金銭運も星3つ。ラッキーカラーはバーガンディ。

 


 
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