プラスマイナス、
家に着いた時、一番に紘奈が出迎えてくれた。
母が昔使っていたワインレッドのエプロンを身につけている。
どうやら家事を手伝ってくれていたらしい。
「まさくんおかえり~!遅かったねぇー」
「うん…、まぁちょっとね。紘奈、具合は大丈夫?」
「うん!薬飲んだらだいぶ元気になったよ~!」
元気そうな紘奈の姿に安心した。
「紘奈の風邪が治ったら、明後日に孤児院のみんなと動物園行くって、みなとさんが言ってた。」
「えっ!ほんとにー!?やったぁ!」
嬉しそうにはしゃぐ紘奈を横目に、僕は階段を駆け上がり部屋に飛び込んだ。
友達がいないので、週末に遊びの約束ができることなどほとんどない。
完全に浮かれている。
わかっているけど、この喜びを抑える術を知らない。
知ってたところで抑えるつもりなどさらさらないけれど。
壁掛けカレンダーを眺め、明後日の日曜日のスペースに“10時、高科孤児院集合”と書き込んだ。