プラスマイナス、
「高科さん。私は――」
―――逃げなきゃ、逃げなきゃ、逃げなきゃ!
「近い未来、紘奈を殺します。」
思考が停止した。
穏やかな表情と声が、恐ろしかった。
「なん…で……」
脳裏に紘奈の屈託ない笑顔が浮かぶ。
「なにがしたいの…あんたは…!!」
「言ったでしょう。世界を造り上げるんです。そのために、紘奈を殺します。」
「あ、頭おかしいよあんた…!あんたもあの子の親みたいなもんじゃないの…!?」
気が動転して、みなとから敬語や丁寧さがすっぽりと抜け落ち、普段の口調になる。
しかしそんなことをいちいち気に止めていられなかった。
「親…、ね…」
斎木がぽつりと呟いて席を立ち、歩き出した。
徐々にみなととの距離を縮める。
みなとはその場から動くことができなかった。
「い…や……こないで…」
「なんでしたら、見せて差し上げますよ」