プラスマイナス、
「…斎木さんに、聞いたんだね。プラスィナーについて」
小さく頷いた。
大粒の雨が絶え間なく打ち付けて痛い。
「斎木さんに拾われたあたしはね、プラスィナーとしての力を計るために、毎日毎日実験をされたの。」
「じっけ……?」
「残酷な映像を見せられたの。
それは戦争とか、本当にあった事件。事件は実際の映像や、CGを使って細部まで作り込まれた再現VTRとか、様々。毎日、人が死ぬ映像を見続けた。
頭の中で見えるから目を閉じても見えちゃって、普通の人だったら精神が壊れるけれど、あたしは壊れなかった。
だからあたしは、プラスィナーとして目覚めた」
言葉が出なかった。
紘奈が斎木さんのところを飛び出した理由も、斎木さんを「変な人」と称して毛嫌いする理由もわかった。
「だから…斎木さんには会いたくなかった。斎木さんが怖かった。
それでもみんながいないから、もしかしたら、って思って、ハートまで向かったの。そしたら…」
言わないで。
どうかそれ以上言わないで。僕を責めないで。
「みんな…死んでた。多分、あたしが見せられた映像を見て。」