プラスマイナス、



その言葉が、僕の心臓をえぐる。

涙が溢れたけど、もう雨と涙の区別がつかない。



そんなつもりじゃなかったんだ。
なにも知らなかったから、



パチン、と音がしたと共に、頬が痺れた。

だんだん熱を帯びる頬に気付き、ようやく僕は紘奈に強く殴られたことを知った。



「まさくん、逃げないで。現実に目を向けて。」




いやだいやだいやだ

やめて、やめて





「あなたが殺したも同然なんだから」





僕は、なんて無力だ。


ただ紘奈を、守りたかっただけなのに。




紘奈が立ち上がり、体の負担が軽くなった。

僕も上半身を持ち上げた。当然背中と後頭部は土で汚れていた。


「取り乱して、ごめん。斎木さんに近付かないように言わなかったあたしの責任でもあるから、まさくんだけのせいじゃないよ」



そんな言葉なんて、もはやフォローにもならない。



「……だいたいの事情はわかったよ。まさくんは、あたしのために行動してくれたんだね。ありがとう」



また心を読んだのだろうか。
しかしそれも、どうでもよかった。

よかれと思った行動に、死者を出してしまったのだから。



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