プラスマイナス、
「あたしね、この力が嫌いだった。
この力のせいで、新しいお母さんに嫌われちゃったし、斎木さんに捕まった。だから使いたくない。普通に生活したかった。
でもそんなわがままをしたせいで、たくさんの人を傷つけちゃった。」
「な……にを…」
いかないで
「あたし、斎木さんのところに行くね。」
行かないで
「あたしがバイオリズムになるから、まさくんはもうあたしのために頑張らないで」
いかないで
「いや…だ……紘奈…」
消えてしまわないで
「紘奈!!」
そう叫んだ刹那
紘奈の手首に着いていた、ふーちゃんが作ったビーズのブレスレットの紐が千切れ、バラバラになって地面に落ちた。
「あ……」
ほどけていく。
顔が、声が、思い出が
散り散りになっていくようで、
「……っ、ごめんっ」
紘奈が壊れたブレスレットの残骸を見ると、一瞬だけ泣きそうな顔をして呟き、その場を立ち去った。
僕は混乱したままの頭の片隅で、去り際の紘奈の表情を思い出した。
紘奈の涙を、僕は見たことがないことに、初めて気が付いたんだ。