プラスマイナス、

紘奈



紘奈が去ってから、僕は思考がなかなか回らずしばらくそのまま呆けていた。


みんなが死んだ。
僕のせいで。

唐突すぎて、あまりに非現実的。


思い出したように雨の冷たさを感じ、誰もいない孤児院に入った。



広間には、一昨日にみんなが寝る準備をした状態のまま時間が止まっていた。

みんなが寝ていた布団、準備した跡。


もう、いないんだ。



世界でたったひとりになってしまった感覚に陥った。

屋根や窓を強く叩く雨音が、さらに孤独を感じさせた。



「ひろな…」


無意識に呟いていた。

彼女はバイオリズムになると言った。
多分、力を月に飛ばすのだろう。


ならば安心だ。紘奈は消えない。



でも、本当にこれでいいのか?


それで、斎木さんの望む世界ができて、本当に幸せなのか?




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