プラスマイナス、
なんだか、斎木さんの手のひらで踊らされたみたいだ。
むしろ、斎木さんはこうなることを予想して僕に話を持ちかけたのかもしれない。
僕はなんて馬鹿なんだろう。
人は裏切り、騙し合う。
そんなの、とうの昔にわかってたはずなのに、
“まさくん”
僕は
人を、信じたかったんだ。
その手が、目が、声が
あまりに暖かかったから。
「ひろな…」
もう一度呟いた。
僕は、僕自身も知らない間に、
こんなにも君を好きになっていた。
“あたしにとっては、命に代えても守らなきゃならない人なの”
いつの日か、紘奈が言っていた。
こんな僕を、命に代えても守ると。
僕だって、紘奈を守りたかった
何の力もない、ただの人間だけれど
それでも、
“まさくん、会いに来たよ”
僕も、今
君に会いにゆくよ。
僕は立ち上がり、ハートに向かうべく孤児院を出た。
雨はいつの間にかあがっていて、虹が見えた。