プラスマイナス、



紘奈は転入初日、彰の脳にその一言だけ送った。
彰が誠斗と登校している時、突然聞こえた。

近くにプラスィナーがいない日常の中に突然飛び込んできたその声を、その時は幻聴かと思い気にしなかったが、思い出してみるとその言葉は自分の尊敬する斎木と初めて会ったときに言われた言葉だと気付いた。


斎木にどうしようもなく惹かれてしまったきっかけとなった言葉だ。


“鍵”は、紘奈を指し示しているということを紘奈はよく知っていた。
もっと詳しく言えば、紘奈自身ではなく、紘奈の持つ強大な力のことだが。


“お前の力が世界を開く、だからお前は鍵だ”と言った斎木の目を思い出すだけで背筋が凍る。


「プラスィナーと確信するために送っただけだよ。ぴったりでしょう?」

「……一目見ただけで、俺がプラスィナーだとわかったんだ。さすが転入生様々はすげーな」


皮肉めいた言葉を吐き、彰は小さく舌打ちした。

口元は笑っているが、紘奈を見る目には憎悪と嫉妬に満ち溢れている。

なんて可哀想な人なんだろう、と紘奈は思った。



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