プラスマイナス、
カッと頭に血が上る。
この人にとっては、命など捨て駒にしかすぎないんだ。
「あんたが、なにを得たのかは知らない、けど…、な、なんで、人を殺しておいて、そんなことを言えるんだ…!」
この人にとっては、“ただの人間”に生きる理由はないのか。
そんな人に紘奈の力は利用され、世界は変わってしまうのか。
そんなの、絶対ごめんだ。
「俺はなにも得ていない。それは君の方さ、吉岡くん」
「……へ…?」
斎木さんがゆっくりと右手を上げると、人差し指でそっと僕の額をつついた。
「今日、10時頃に叫んでいただろう?恐らく、高科さん達の死を初めて知り、それが自分のせいだと発覚した時だ」
孤児院での紘奈との出来事を思い出した。
あの時僕は、後悔と恐怖で耐えきれなくなり叫んだ。
「…それが、なに…?」
斎木さんが意味ありげに鼻で笑った。