プラスマイナス、
「君は、神にもなりうる力を、たったひとりの少女を救うためだけに使うんだな」
斎木なりの精一杯の皮肉だった。
その言葉に、吉岡誠斗は初めて反応し声を出した。
「僕はあんたじゃないから、この世界を嫌ってもいないし世界を変える気もないし、惑星だってつくらない。」
それは、今もなお想いを寄せる初恋の少女とは永遠に結ばれないことを意味する。
自分で発したその言葉に、吉岡誠斗の胸が少し軋んだ。
「確かに、あんたの言ってることは正しいよ。世の中は汚くって醜くって不公平だ。それでも、」
―――懸命に生きている人たちがいる。
明日がないかもしれない人
自分の居場所を確立できない人
血の繋がりがないけど、傷を舐め合って生きている人たち。
その諦めずに生き続ける命が、なによりも眩しく輝き明日を照らす。
苦しくても辛くても、世界はこんなに美しい。
「紘奈を苦しめて創られる世界なら、いらない」
君が、教えてくれたんだよ。
紘奈。