プラスマイナス、
痺れを切らして叫んだ直後、後悔した。
「なんとも…思わないけど…?」
―――さえは、俺を好きじゃない。
きょとんとした顔で言われ、定岡の心は深くえぐられたような痛みが走った。
その途端、目からボロボロと大粒の涙が零れた。
「えっ、け、けいちゃん?!」
さえが突然の出来事に困惑している。
周りの登校中の児童たちも二人を見てひそひそ話したり、立ち止まって状況を眺めたりしていた。
「さえのバカ!もう嫌いだ!」
「けいちゃ…」
さえが伸ばしかけた手を思い切り振り払った。
バチン、と皮膚のぶつかり合う音に少し遅れ、車のクラクションが響いた。
手を振り払った反動でよろめいたさえの体を、たまたま通りかかった車が跳ね飛ばしていた。
道路と歩道が一緒になっている小道での些細な小競り合いが、一瞬にして事故に変わった。