プラスマイナス、
きっかけは、ほんの一言。
“斎木紘奈、オトしたいんじゃない?”
彰のこの一言に誘われ、瞬く間に堕ちた。
「定岡をマイナリーにしたのはお前だよ、斎木紘奈。」
予想外の出来事に、紘奈の思考はまともに働かなかった。
自分の存在が、またしても誰かの心を壊した。
自分がいるから、みなとさん達は犠牲になった。
膨大なほどの罪の意識に襲われた。
あたしがいなければいいのかな?
あたしが惑星を創れば、みんな幸せになれる世界ができるの?
それが、あたしにできる償い?
「責任取れよ、斎木紘奈。けじめ、見せてみろ」
一歩、また一歩と、紘奈は定岡との距離を縮めた。
あたしのわがままで、大切な人達が死んで、無関係の人まで傷付けて
それならいっそ、この思いごとすべてここに置き去りにして
新たな気持ちで、素晴らしい世界を築き上げていこう
「紘奈!!」
気弱な少年の声が、室内に響く。
彼女が想ってやまない、吉岡誠斗の声だ。
「まさ、くん…」
吉岡誠斗を捉えた彼女の瞳から、涙が一筋、流れた。
状況を傍観していた彰が、「そうこなくっちゃな」と呟きながら、唇を舐めてニヤリと笑った。