プラスマイナス、
記憶
紘奈が、泣いていた。
大きな澄んだ瞳から、涙が一筋だけ零れた。
なんて、綺麗な涙。
まるで、こんな世界さえも照らし出せるような。
「良いタイミングだなぁ誠斗。紹介するよ、マイナリーの定岡だ。」
「さ…だ、おか……?」
彰に呼び掛けられ目をやると、紘奈の隣にいる人影は、見紛うことなく同じクラスの定岡だった。
「てわけで、惑星を創る材料はもう揃ってんだ。お前はいらねーから帰れ。」
彰が僕を追い払うようにシッシッと手を振りながらそっけなく言い放つ。
「あ。そうだ、トシさん連れてきてくれよ。あの人の夢が叶う瞬間なんだからトシさんがいなきゃ始められない。」
「………なら、始める必要なんかないよ」
「…は?」
斎木さんは先ほど僕が消してしまった。
ディラックの海に融ける斎木さんは、最期に一瞬だけ柔らかく微笑んでいた。