プラスマイナス、
終結
「そん…な、おい、起きろよ定岡」
一部始終を見ていた彰が、呆然としながら倒れた定岡に歩み寄り、定岡の体を揺さぶった。
「斎木紘奈を取られるぞ、いいのかよ…。せっかく、マイナリーになったのに、こんなあっさり…!」
どんなに揺さぶっても定岡は目を覚まさない。
彼の意識はいま、誰の声も届かない場所で、再びパズルを組み立てている。
「誠斗、お前定岡になにを…!」
彰が振り返り僕の顔を見て、目を見開いた。
「とりあえずさ、これで引き分けってことにしてくれない?」
定岡に殴られた僕の頬は、ディラックの海に融けて消失していた。
殴られた衝撃で、ディラックの海に敷き詰められた負のエネルギーが一時的に崩壊し、僕の体をどんどん消失させていっている。
「これは……どういうことだよ…誠斗」
彰は突然の出来事に言葉を失っている。