プラスマイナス、
「あ、れ…俺、なんでこんなとこに…。ここどこ…?」
「山瀬くん…」
目を覚ました山瀬くんは、ハートのこともプラスィナーのことも忘れているようだった。
「わっ、えっ、なんで俺こんなところで吉岡さんといるの?!」
吉岡。
愛しい人の苗字があたしに向けられる。
まさくんが作り替えた世界では、あたしは“吉岡紘奈”として育っているらしい。
山瀬くんには「誤って迷い込んだ」ということで話を作って帰らせた。
あたしはまさくんの家に向かうと、案の定吉岡家の娘として迎えられた。
「こんな時間までなにしてんの紘奈!!」
まさくんのおばさんが、あたしを一人娘だと信じ込んであたしを叱咤する。
ずっとずっと、独りぼっちだった。
邪魔者で、嫌われて、利用されて。
無償で心配されたことなんてなかったから
お母さんの説教が、こんなに暖かくて嬉しいことだとは知らなかった。