プラスマイナス、
驚きで体が跳ねた。
僕を呼びかける声とともに紘奈が公園に入ってきた。
「ここにいるんだよね?」
僕を心配する声。
だけれど僕にはなぜか、お化けが僕を探し回ってるような感覚がして、狭いタコの頭部の中で身を縮ませて息を潜め、手の震えを抑えるため、顔をうずめた膝をギュッと握りしめた。
「あれっ、紘奈サンもサボりー?」
「さ、定岡くん?!」
定岡の声がした。
いつもなら不愉快極まりないこの特徴的な喋り方が、今の僕にはこれ以上にない救いの手に感じた。
「定岡くん、まさくん見なかった?」
「吉岡ぁ?見てないけど」
紘奈は既に今朝自ら提案した“校外では吉岡くん呼び”を忘れてるようだ。
「…あのさ、なんでそう吉岡にこだわんの?」
「え?」
うわぁ、ここでまだ僕の話を掘り下げるか。
定岡は僕がこんな子供じみた滑り台にいるとは思ってないぶん、ここで僕の話をされたら当人としてとても気まずい。
しかし無意識のうちに好奇心が勝っていて、僕は定岡の言葉にしっかり聞き耳を立てていた。