プラスマイナス、
そうだ、話を戻そう。
世界は常に平等。
けれど人間は不平等。
それは世界が望んだことだろうか。
いいや、これは神が醜い人間に放った試練。
しかしその試練を乗り越えるには、人間はあまりに脆弱すぎる。
そして生まれたのは僕らなのだ。
世の中を正しく導く力。
世界を変える力。
これはきっと使命なんだ。
神が僕らに与えてくれた使命。
ならば僕が世界を変えれば、さしずめ僕は神様か。
けれど力を持っていても、僕はやっぱりみんなとなんら変わりない脆弱な人間なので、同志たちの集団に足を踏み入れた。
入ったときに一番最初に聞いた言葉を、今もよく覚えている。
深く響く低音は、全身を瞬く間に覆った。
「おまえじゃない」
そして呆然とする僕を見て、こう言った。
「“鍵”は、ひとつだけ」
言っている言葉の意味がわからないでいる僕に向かって、彼は手を伸ばした。
不思議な感覚がして、どこからともなく幸福感が満ち溢れた。
僕は迷わずに差し伸べられたその手を取った。