プラスマイナス、
みなとさんの手が後頭部から離れて、僕が顔をあげると同時に、玄関から子ども達が駆け寄ってきた。
「ひろなお姉ちゃーん!」
「がっこうじゃなかったの?」
「この人だぁれ?」
どの子も幼稚園ほどの幼い子どもだ。
みんな紘奈とみなとさん目掛けて走ってきた。
「ほらほら走るんじゃない!今に転ぶよ!」
子ども達に向かってそう呼び掛けるみなとさんは、まだ若いはずなのにすっかり母親の顔だ。喋り方も少しおばさんくさいのは、やはり院長として子どもをまとめる位置にいるからだろうか。
「紘奈は体調が悪くて、まさくんに付いてきてもらって帰ってきたの!」
みなとさんが子ども達にそう言った。
子どもの手前、サボタージュなど言えるわけもないから当然だ。
「えー!あのまさくん?!」
「ほらほら、質問はあとだよ。早く医務室行きな」
見ず知らずの子どもにも呼ばれた。
さすがに不快になってきて紘奈を見ると、苦笑いで顔の前で両手を合わせ謝罪のポーズをとっていた。