プラスマイナス、
ふと医務室の引き戸を見ると少しだけ開いており、その隙間から8、9歳ほどの女の子が覗き見していた。
「あれぇ?ふーちゃんどうしたの?」
紘奈もすぐに気がついて覗き見している少女に声をかけた。
彼女は紘奈の呼びかけに応え、医務室に入ってきた。
「ひろなお姉ちゃんが元気ないって、みなとお姉ちゃんが言ってたから…」
元気ないというか、まぁ仮病なんだけど。
しかしそんな嘘を間に受けて心配して様子を見にくる純粋さは心が洗われるようだ。
今朝仮病を使ったのに華麗に玄関まで送り出したうちの母とは大違いだ。当然だけど。
それにしてもみなとさんは、こんな小さな子にまでお姉ちゃん呼びを強要してるのだろうか…
「ありがとふーちゃん。でもみんなの顔見たら元気になったよ」
紘奈が笑って答えると、ふーちゃんと呼ばれた少女は笑顔で駆け寄ってきた。
そのまま紘奈に飛びついたと思ったら、いきなり僕に向き直った。
「あのっ、まさくんですかっ?」
「あ、はい…」
はきはきして元気よく、それでいてしっかり敬語を使ってることに、小さいながらも礼儀正しい子だと思った。