プラスマイナス、
ふーちゃんはスカートのポケットに手を突っ込み、ごそごそと弄ったあと、ポケットから引き抜いた手を僕に差し出した。
手はグーだったので、おそらく何かを握っている。
「もらってあげて」
紘奈がそう言うので、訳もわからないままふーちゃんのグーの手の下に手を出した。
「あげますっ」
「あ…?」
広げた手から落ちてきたのは、ビーズのアクセサリーだった。
小さな輪だったので多分指輪だろう。
細い透明なてぐすいとに小さなビーズが丁寧に重ねられ、キラキラと輝いている。
「ふーちゃん特製の指輪。綺麗でしょ?」
「うん…でも、なんで僕に?」
突然訪れた僕にビーズのアクセサリーをくれるとは思わなかった。
ましてや僕は男だというのに。
ふーちゃんはさっきの元気良さが嘘のように、俯きながらもじもじしてる。
「まさくん、ひろなお姉ちゃんのだいじなひと……だから、ふーもまさくん、だいじ…」
舌っ足らずな口振りで告げられたこの幼い告白は、可愛らしい以外の何物でもない。
ふーちゃんはそのまま走って医務室を出て行った。