プラスマイナス、
「あ…」
斎木さんがいた。そういやこんな人にも会った。
昨日は孤児院の子どもたちとも会ったからすっかり忘れてた。
紘奈を待ち伏せしてたんだろうか。
「ん…?」
僕の声に気付いて、彼は振り向いた。
目が合うと彼は笑いながら声をかけてきた。
「君は…吉岡誠斗くん、だっけ」
「あっ、す、すいません、き、今日紘奈とは一緒じゃ、なくて…!」
昨日のような鋭い目はないけれど、紘奈の嫌う人だ。なにをされるかわからない。
途端に体が震えだして、後ずさる僕をみてなお笑った。
「いいんだ。君ともぜひ話をしてみたいと思っていた。」
怪しい。怪しすぎる。
知らない人についてっちゃ行けない。いや、でももう互いに自己紹介してるから知らない人にはならないのか…?
いやいや、どっちにしたってこの状況はやばすぎる。
「少し話をしないか。そうだな…」
だけど体が震えて、僕は逃げることはできなかった。
「世界を変える方法、なんて話はどうだ?」
“まさくんは、世界を変えるには、どうすればいいか知ってる?”
““ゼロ”を、“プラス”にすればいいのさ。”
震えていたはずの僕の足は、自然と斎木さんに向かっていた。