プラスマイナス、
確かに紘奈が初めからいなければ、今僕が毎日怯えることもないし、なにより昔の大泣きしたこと自体が消える。
あれがなかったことになれば、今の僕とは180度違う人間になれたはずだ。
今よりもずっと、素晴らしい人生を歩んでるに違いない。
なのに、どうしても納得がいかない。
「…紘奈を…利用するんですか…」
「強い力を持った人間にしかできないことだ。」
「プラスィナーである前に、紘奈は普通の女の子で……」
胸がもやもやする。
落ち着かない。
「僕の、幼なじみです…」
もう二度と、失いたくない。
「君はなにか勘違いをしていないか。俺は私利私欲のために紘奈を使うわけじゃない。世界を、変えるためだ。」
斎木さんは、先ほどの数式が書かれた紙をベンチに置き、立ち上がった。
「だっ、だから、世界を変えるってなんなんだよ…!そんなに変えたいなら、あんたが変えればいいじゃないか…!」
混乱してて、僕は斎木さんにタメ口を使ってしまっていることにさえ気付かなかった。