プラスマイナス、
久しぶりにひとりで登校する通学路は、きっと爽快に違いない。
注目される人が僕の隣りにいないからだ。
しかしそんな希望は見事に打ち砕かせた。
「あいつ、転入生の彼氏?」
「今日ひとりじゃん。フラれた?」
「フラれて当然じゃん。釣り合わないもん」
人の噂も七十五日、という言葉がある。
噂など長続きせず、すぐに消えてなくなる、という意味だ。
しかし僕を苦しめるには75日は十分すぎるほど長すぎた。
軽く2ヶ月半も噂され続けるなんて冗談じゃない。
まぁ75なんて数字には特別意味もないらしいし、ましてや飽き症の中学生の噂なんて長くて1ヶ月ほどだろう。
ただ1ヶ月ならいいって話でもないけど。
「よーっ!噂のダサ男君!」
元気よく背中を叩いてきたのは彰だった。
こいつは僕をバカにしたいのか、イラつかせたいのかどっちかに決まってる。
「例の彼女はいねんだ。めっずらしー。なに、マジでフラれたの?」
「関係ないだろ」
「えーーっ!!否定しないってことはマジでフラ」
「ちっ、違う違う違う!!風邪で欠席してるだけ!!」
「なーんだ」とつまらなそうに唇を尖らせたのは彰だけでなく、周りの生徒たちも予想が外れてつまらなそうだ。