プラスマイナス、
彰が手を真っ直ぐにあげて「はいはいはいはい!!」とアピールをしている。
教室では決して見られない光景に驚いた。
「知ってる!アレだ、エヴァの第十二使徒レリエルのやつ!」
確かにエヴァンゲリオンに、そんな単語があったことを思い出す。
しかし使徒の番号と名前まで覚えてる彼に脱帽した。
「正解は、量子力学の概念だ」
斎木さんはそんな彰の解答を、にこりともせず一刀両断した。
当の彰は盛大にスベったことにしょぼくれもせず、先ほどの興味津々な様子でうんうんと頷きながら「へぇ~」と感心していた。
「負のエネルギーが敷き詰められている真空状態のことだ。我々はこのディラックの海が、一種の宇宙空間に等しいと考えている。」
また意味の分からない話が始まった。
聞いたことのある単語、というささやかな救いが、ガラガラと崩れ落ちてまた変な形に変形しようとしていた。
「負のエネルギー、つまりマイナリーが消えるとき、ディラックの海が生まれる。しかし無限の負ということは、逆算すれば力を与えればなんにでも変化するということだ。そこにプラスィナーを結合させれば、惑星は容易くできる。」
容易く、できる?
それでいなくなる人がいるのに