プラスマイナス、
「……ゃ…ちゃ、だ…」
わなわなと震えだした。
この人は命をなんだと思っているんだ。
「ん?どうかしたか」
理想郷のために、他人の命を容易く、
「むちゃくちゃだ、こんなの!!」
声を荒げた。
彰が驚いた顔をしてる。
しかし斎木さんは表情ひとつ動かさず言い放った。
「理論上は可能だ。裏付けるように、ディラックの海には孔空理論も存在する。真空との境界面に高いエネルギーを与えると、一時的に真空が崩壊し、負エネルギー電子が正エネルギーに変わる。」
「こ、こんなの可能なもんか!人間が宇宙になったり惑星をつくったりできるわけない!」
「俺がいつ、無力な人間の話をした。」
…………は…?
「俺は、プラスィナーとマイナリーの話をしている」
人間扱い、してない。
彼にとっては本当に、消耗品なんだ。