プラスマイナス、
「なんか、悪いな。トシさんと空気悪くなっちまって」
「別に、彰は悪くないよ」
単に僕と斎木さんの性格が合わないだけだ、と言おうかと思ったけどやめた。
「俺さ、この世界が嫌いなんだ。」
彰が藍色に染まる空を仰ぎながら言った。
普段の彰からは想像もつかないほど、その表情は真剣で、どこか悲しげだった。
「俺もさ、斎木さんや転入生ほどじゃないんだけど、色々あってさ…」
彰の声が徐々に震えてきた。
それに反して声色は明るく振る舞うように装っている。
僕はなにも言わずに、次の言葉を待った。
「小学四年の頃、親友がいたんだ。一緒にいて楽しかったし、卒業しても、大人になっても友達だと信じてた。
けど裏切られた。
親友だと思ってたのは俺だけだったんだ。」
“彰に「死ね」とか「ばか」って言われるの、辛いんだ”
“そんなの冗談に決まってんじゃん。ほんとに思ってたら言えないって”
“彰は頭いいしカッコいいから良いよね。でも僕は、彰の引き立て役じゃない。
辛いんだよ、死んでしまいたくなるぐらいに。”