プラスマイナス、
やがて彰が僕に向き直った。
その表情は泣きそうだった。
「なぁ、なにが悪かったと思う?あいつが嫌がってることを無意識にし続けた俺の鈍さ?それとも嫌なことをはっきり言い出せなかったあいつの弱さ?
そんな不器用な人間ばかりの世界なら、俺きっとまた同じことを繰り返す。そんなのはもう嫌なんだ。
だから俺はつくる。トシさんと一緒に、トシさんの理想郷を。」
泣き出しそうな目で、その目の奥深くに宿る強い意志を語られ、反論できなかった。
彰の気持ちは痛いほどよくわかる。
人はどうしようもなく不器用で、矛盾をしてる。
言っていることと思ってることが違う人の、その胸の内を知る術なんてないんだ。
「でも、僕は…」
僕にも目的がある。
斎木さんや彰と同じように。
「紘奈を消すわけにはいかないんだ」
不器用で、矛盾だらけで、汚い世の中かもしれないけど、
僕にとっては紘奈がいれば、いつもの通学路でさえ眩しく輝くのだから。