プラスマイナス、
このままでは井戸端会議なるものが始まってしまう。本当にこの人はお喋り好きなおばちゃんだ。まだ若いのに。
「あのっ…今日来たのは訳があって…」
「ん?なんだい?」
「えっ…と…………ひ、紘奈の、前の家の人が……」
「あぁ、斎木さんかい?」
思わず顔をあげた。
「斎木さんを知ってるの?」
「紘奈から聞いたことがあるだけだよ。会ったことはないね。」
下手に嘘をつくと矛盾する。
ここは慎重にいかないといけない。
「斎木さんが…その、今紘奈がお世話になってる人方と会ってみたいって、言ってて…」
「へぇー!そりゃ嬉しいねぇ。あたしも斎木さんに色々聞いてみたいんだよ。紘奈の話をさ」
みなとさんは腕組みをしながら興味深げに突っ込んできた。
「……紘奈の、話?」
「そっ。あの子、まさくんのことや継母に毛嫌いされたことは話すのに、斎木さんとの生活については一切話そうとしないんだよ。」
“みんなの知らないあたしのことを、ひとつも漏らさずに知ってもらいたいんだ”