プラスマイナス、



僕は靴を脱ぎ、スリッパに履き替えて振り返った。

「僕、斎木さんを探してくるのでちょっとここで待っててください」


みんなを玄関で待たせ、僕はひとりで建物の中に入っていった。

“今、紘奈がお世話になってる人方に会って話がしたいと斎木さんが言っていた”という嘘に、付き合ってもらわなければならない。

口から出任せであんなこと言っちゃったけど、あの人が僕の都合に合わせてくれるかどうかを考えると微妙なところだ。


まぁ、もしみんながプラスィナーじゃなかったら、みんなは今後一生斎木さんと関わることもないだろうから、話が噛み合わなかったとしても後日僕が「あの人ちょっと変だから」とテキトーにフォローでもすればいい。



僕は放課後にも覗いた、体育館のような大広間への扉を開けた。


大広間は電気も消されて、誰かがいる気配はない。
昼間はあんなに人がいたのに、となんだか不思議な気持ちになる。

あの人方はここでなにをしていたんだろう。
やっぱり宗教らしく、“儀式”と称して無意味なことでもやっていたんだろうか。


想像したらあまりの薄気味悪さに鳥肌がたったので、大広間を出た。


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