プラスマイナス、
突然響いた重低音に思わず声があがりそうになった。
振り向くとそこには、恐ろしいほどの威圧感を纏った斎木さんがいた。
「あ……、さ…」
「そこに近付くな」
「へ…?あ、あの僕…」
「近付くなと言ってるんだ!!」
いきなり怒鳴られ、僕は「はっ、はひぃっ」と間抜けな声を出した。放課後の時の斎木さんに対する威勢はどこに行ったんだ。
「…こんな時間にどうした」
「あっ、え、えっと…プラスィナーかもしれない人達を…連れて、来ました」
「あの話か。随分早いな」
「あのっ、その人達は今紘奈が住んでる孤児院の院長と孤児達で…、まだプラスとかマイナスの話はなんもしてなくて…。斎木さんが、今紘奈がお世話になっている人達と会いたいって言ったってことになってるから…」
「…そうか、わかった。」
もう夜で照明も落ちてるせいか、斎木さんの表情が見えない。
この人には、紘奈を守るためにこんな時間に人を呼び集めた僕が、どのように見えているんだろう。
ひどく滑稽に見えているのかもしれない。
僕は斎木さんと一緒に、みなとさん達が待ってる玄関に向かった。