政府より魔女へ
第一話「怪物Ｇ」
その魔女は言った。

いつでも来ればいい、と。

彼女の作ったケーキも、彼女の煎れる紅茶も、すばらしくおいしかった。

だから行きたいと思っていたはずなのに、どうしてもそこへ足を踏み入れることはできなかった。

彼女は森の中に家を構え、自炊していた。

ただ一人、ずっとこうしてきたのだと言っていた。

はるか昔、人々は訳のわからない力を持った魔女を恐れ、そして世の中から葬り去った。

けれど今、魔女の力が必要とされていた。

人間の拙い技術では、決して不可能な事態であった。いや、その拙さゆえの結果であった。

人間は生み出してはならないものを生み出してしまったのだ。

人体実験の末の、怪物じみた危険性の強い生物である。

殺傷能力に優れ、そのゴキブリ以上の生命力は生みの親を困らせている。

そこで、政府は対抗するため研究を続け、同時に、かつては同種とみなされていた魔女で危機を逃れようと考えたのだ。

まだ魔女の方が安全であるということだ。

だから僕は“政府”の犬として、こうして彼女の許(ﾓﾄ)を訪れた。

最初は様子を見るために。

二回目の今日は、協力の依頼のために。

けれど、こうしてこの前と同じ道を歩いているのに、そろそろ着いてもよさそうなのに、気付いたときには道に迷っていた。

「でもまぁ、前はすぐに森から出てしまっていたし、進歩かな」

きっと、彼女の仕業に違いない。

「いつでも来たらいいって言ったくせに」

そんな僕の耳にざわついた音が届く。

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