政府より魔女へ
挿話「無情の異端者」
「母さま、私たちはどこへ行くのですか」

少女は訊ねた。

「私たちだけの場所へ行くのですよ。よくお聞き。私たちが今まで使ってきた力を、人間は恐れはじめたの。だから、着いたら、そこから離れてはなりません。ずっと、私たちはそこで暮らすのです。私たちは、魔女だから」

「ここにいてはならないのですか?」

「愛しい子よ、あなたが傷つくのはいやよ」

人間はあなたを苦しめる。辱(ハズカシ)めを受けるのはあなた自身。

あなたはきっと後悔する。

「力を使わなければいいのでしょう?」

そうすれば.....

幾度と夢に見る少女。彼女は人間に恋をし、愛され、けれど魔女であることがばれ、その身を引き裂かれた。

愛しい男に見捨てられ、その目の前で。

「助けを乞うがいい! それだけでも気はまぎれようぞ。報いを受ける日はやがてくるのだから―――」

呪い死んだ少女。

彼女は魔法で腹の子だけは守った。


“ひっそりと暮らして。

心は常に、無情、非情。

仲間と一緒でもいい。

この森で暮らしてもいい。

だけど覚えておいて。

ここは人間の手に触れさせてはならない。

あなたは人間から守るべきものを守っていくの。

それがあなたの生まれた意味。

そのために、私はあなたを守りましょう。”



私は一人でいい。

ずっと一人でいい。

生まれたときから、

あるのは魔法とこの森だけ。

そもそも私は、魔法で生まれた異端者。

処女から生まれたおかしな魔女。



私はずっと、一人でいい 。




【無情の異端者】終
< 23 / 54 >

この作品をシェア

pagetop