政府より魔女へ
第二話「地底人Μ」

彼は森の中を歩いていた。

道案内人を置いてきてしまったので、果てしなく続く道のような所でふと立ち止まる。


迷ったかもしれない。


引き返そうとしたその時、彼の耳に不思議な声が届いた。

――――こっち‥‥

彼は声の主に確かな方を示されたわけでもないのに、足の向くまま進んでいった。

やがて、目の前に家が現われる。

「‥‥‥」

そこに、洗濯物を干している最中の女性がいた。

丈の長いワンピースに白のエプロンをつけて、彼女は張られた一本の太い縄に大きなシーツを引っ掛け、整えていた。

終わったのか、彼女はふっと息をついてからこちらを見た。

「どういった御用でしょう」

呆然と眺めていた彼は、驚くほどの端麗な容姿から発せられる声に胸を打たれた。

すると背後から、

「あ、局長、もう着いていたんですね」

彼の部下、七丘が、彼を現実へ誘う。

「あら、あなた...」

彼女はその部下を見て、全てを察した。

「とりあえず、お茶でもどうぞ」

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