願いの館
どちらも人。


そして、曖昧。


成り立つのに必要なのは..........


「人の感情.......ですか?」

「正解よ。人の感情は複雑なの。自分でコントロールできないもの。理不尽よね」


リーアさんは、何処か遠い目をしている。


何かを思い出しているような。


そんな瞳をしていた。


「リーアさんの言うとおりですね。感情は自分でコントロール出来ない。私は今でもいじめの主犯格の子が嫌いになれないですから」


私は思わず、俯いてしまう。


嫌いになれたらどんなに楽なんだろう。


「無理に嫌いにならなくてもいいのよ。嫌いだと思わないのはその子の良い所も知っているからでしょう?其処まで否定しなくてもいいわ」


リーアさんは優しく、諭すように微笑む。


「でも、みんながみんな、人の事を嫌いにならなければこんな風にならないのに」

「そうね。でも、『キライ』が無くなると言う事は『スキ』無くなると言う事でもあるのよ?」

「え?」

「『キライ』があるから『スキ』があるの。『スキ』があるから『キライ』があるの。反対の意味を持つ言葉達はね、その反対の言葉が存在しないと存在出来ないのよ」


リーアさんはまた、遠い目をする。


綺麗な過去に浸っているのかもしれない。


あたしには分からない事。


でも、リーアさんにとって、その過去が嬉しかったけど悲しかった、そんな矛盾したような思い出だと言う事は分かった。


だって、リーアさんは、愛おしそうに涙を流していたから。




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