恋スル手紙
そう言いながら振り返ると、目の前には後ろ手に髪を結びながら立つ栞がいた。


もちろん、下着姿のままだ。


黒く長いサラサラのストレートヘアを一本にまとめ、無造作に置いてあるたばこをくわえ、火をつける。


一連の動作に、直樹は不覚にも見惚れてしまった。


「まあまあ、怒るな僕。仕方ないだろ? ナオは僕のことをパパだと思い込んでるんだから。それにナオの直也と、僕の直樹って名前が悪い」


「はあ?」


たばこの煙りを天井に向けて吐き出しながら、“間違えそうじゃん”と栞が言った。
< 20 / 36 >

この作品をシェア

pagetop