恋スル手紙

不在の一号室は無視して

自室に戻り、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プルタブを引いた。
半分ほど一気に飲み干し、ベッドに横たわる直樹。


「彩香……」


天井に向かって呟くが、当然返事はない。
まさか、そんな風に思われてたなんて……。直樹の胸中には、自分自身への憤りというか、ふがいなさのようなものが渦巻いていた。


不思議と彩香に対しての怒りとかはなく、ただ男としての自信をへし折られた。


そんなことを考えている直樹の部屋に、微かな金属音が聞こえる。
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