恋スル手紙
肩に触れた手に気付き顔を上げると、直樹の視界は一気に閉ざされた。


鼻孔をくすぐるメスの匂い。
唇を覆う柔らかな肉質。


少し苦いたばこの味。


一瞬の眩暈。遅れてくる衝撃。
ハッと我に返り、顔を背ける直樹。
横目に映る寂し気な栞の表情。


「なっ!? 冗談はやめてください!」


さっきの表情が見間違えかと思うほど、悪戯っぽい笑顔を浮かべて栞が答える。

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