Escape from the DEAD second night
紅から日本刀をしゃくり取り、男は嘲笑する。

「ところで小僧、この姉ちゃんはお前の女か?」

「違う!要と私はそんなんじゃない!」

紅が否定する。

「へぇ?そうかよ。でも小僧の方はそんな風じゃねぇぜ?」

要の悔しげな顔を見てニヤつく男。

「たまんねぇよなぁ…惚れた男の目の前で、女を奪い取るってのはよぉ!ぎゃはははははっ!」

…歪んでいた。

こんな世界にならなければ、この男は醜い本性をひた隠したまま生活していたのだろう。

しかし、モラルを遵守しなければ罰せられる世界は崩壊した。

鬱屈していた感情が暴走し、男はやりたいようにやって生きている。

欲しいものは奪い、気に入らないものは殺す。

僅かに機嫌を損ねただけでも、今のこの男なら命を奪いかねない。

秩序なき暴力に支配された外道。

目の前の男は、既に人間ですらなくなっていた。

< 34 / 132 >

この作品をシェア

pagetop