Escape from the DEAD second night
見苦しく取り乱す寸前だった。

どんなに問いかけても、相手は最早物言わぬ屍だ。

かつての仲間だろうと、一度は想いを寄せた相手だろうと、ゾンビ化してしまえば生前の記憶は儚いまでに消えてなくなる。

残るのは、『目の前の人間は美味いかどうか』『こいつは食えるのかどうか』という本能的な欲求のみ。

そこには良心の呵責も躊躇も逡巡もない。

迷いなく食らいつき、肉を頬張り血を啜る。

残酷なまでの結末がそこには待っている。

「要!撃て!」

別のゾンビ達を校門越しに日本刀で貫きながら、紅が叫ぶ。

「そいつはもう来生じゃない!お前の知っている来生はもういないんだ!」

紅でさえ、そこまで口にしてグッと唇を噛み締めた。

何とも思わない訳がない。

仲間が屍として徘徊するという辱めを受けていながら、何とも思わない訳がない!

「撃つんだ要ぇぇぇぇっ!」

< 78 / 132 >

この作品をシェア

pagetop