の。
その日はよく晴れた、絶好のエアスラ日和だった。怪我をして試合に出られなくなった友人の代わりにソードに出場した僕は、調子に乗ってアローにも飛び入りで参加してみる事にしたのだ。きっと天気がよかったからだろう、僕の気分がよかったのは。
しかし、僕はすぐに自分の甘さを思い知る事となる。予選を勝ち抜け本戦に挑んだ僕は、ついに準々決勝で大ハズレを引いてしまう。いや、ある意味これは大当たりだ。なぜなら、準々決勝の相手は僕の、いや、日本中のエアスラファンの憧れである“爆風”と呼ばれる男だったのだから。
本名不詳の彼は、その通り名に恥じない力強くも華麗なジャンプで、敵、味方、観客、その全てを魅了する事で有名だ。しかし、ソードにも出場していた僕のスタミナは既に空っぽに近くなっていて、決勝で彼と当たっていたら、恐らく全く相手にならなかっただろう。このタイミングで勝負できるのは、僕にとっては幸運であるはずだ。
相手よりも高く跳ぶ──ただそれだけの競技に、僕は全ての力を注ぐ事にした。ソードもまだ決勝にも進んでいないけど、向こうは捨てよう。掛け持ちをしながら戦える相手ではないのだ、エアスラの神は。ソードだけではない。僕は、アローの準決勝と決勝も捨てる覚悟を固めた。爆風と共に走れる事は、それほどまでに僕にとって意味のある事なのだ。
そして、いざ共に走った事ですぐに分かった。ソードにも、まともに衝突すれば僕なんかじゃ太刀打ちできないような猛者が何人もいたけれど、爆風は明らかに別格だ。僕が繰り出すトリックを潰しに来る訳ではなく、しかし僕の繰り出すトリック全てを凌駕する大技を連発する彼に、僕は何度も心を折られそうになる。それ程までに、彼は圧倒的だった。
ハーフパイプの頂上から滑り降り、その勢いで対岸の頂上まで駆け上がる。その勢いでジャンプを行うまでは、他のランナーと違いは無い。そして、そのジャンプの高さを競うのが、アローだ。
しかし、特筆すべきは彼の“影走り”。彼はジャンプした後こそが、尋常ではなかった。あたかも透明な壁を駆け上がるかのような特大のジャンプは、僕の持てる技術と知識と体力を総動員しようと、決してそれを超える事が出来ない。
万策尽きた僕は最後の手段として、爆風の影走りを見様見真似で──
しかし、僕はすぐに自分の甘さを思い知る事となる。予選を勝ち抜け本戦に挑んだ僕は、ついに準々決勝で大ハズレを引いてしまう。いや、ある意味これは大当たりだ。なぜなら、準々決勝の相手は僕の、いや、日本中のエアスラファンの憧れである“爆風”と呼ばれる男だったのだから。
本名不詳の彼は、その通り名に恥じない力強くも華麗なジャンプで、敵、味方、観客、その全てを魅了する事で有名だ。しかし、ソードにも出場していた僕のスタミナは既に空っぽに近くなっていて、決勝で彼と当たっていたら、恐らく全く相手にならなかっただろう。このタイミングで勝負できるのは、僕にとっては幸運であるはずだ。
相手よりも高く跳ぶ──ただそれだけの競技に、僕は全ての力を注ぐ事にした。ソードもまだ決勝にも進んでいないけど、向こうは捨てよう。掛け持ちをしながら戦える相手ではないのだ、エアスラの神は。ソードだけではない。僕は、アローの準決勝と決勝も捨てる覚悟を固めた。爆風と共に走れる事は、それほどまでに僕にとって意味のある事なのだ。
そして、いざ共に走った事ですぐに分かった。ソードにも、まともに衝突すれば僕なんかじゃ太刀打ちできないような猛者が何人もいたけれど、爆風は明らかに別格だ。僕が繰り出すトリックを潰しに来る訳ではなく、しかし僕の繰り出すトリック全てを凌駕する大技を連発する彼に、僕は何度も心を折られそうになる。それ程までに、彼は圧倒的だった。
ハーフパイプの頂上から滑り降り、その勢いで対岸の頂上まで駆け上がる。その勢いでジャンプを行うまでは、他のランナーと違いは無い。そして、そのジャンプの高さを競うのが、アローだ。
しかし、特筆すべきは彼の“影走り”。彼はジャンプした後こそが、尋常ではなかった。あたかも透明な壁を駆け上がるかのような特大のジャンプは、僕の持てる技術と知識と体力を総動員しようと、決してそれを超える事が出来ない。
万策尽きた僕は最後の手段として、爆風の影走りを見様見真似で──