の。
 冗談じゃなかった。
 ただでさえ厄介な吸血鬼に、これ以上増えられては敵わない。
 ……そうだ、身を守らなきゃ。 奴等は捕食者だ。
 人間を餌とする鬼なんだ。
 そうと決まれば、武器。
 それから防具。
 ええと、吸血鬼を相手にするのに必要な武器って何だろう?
 ヴァンパイアは、確か白木の杭を心臓に打ち込めばやっつけられるんじゃなかったっけ?
 ……没。
 そもそも、気配を殺して接近してきて、しかも人智を越えた速さで舞うアレの心臓を、ただの人間が正確に狙えるはずがない。
 ついでに言うなら、私の持ち合わせに白木の杭なんて品も無い訳で。
 じゃあ、銀のナイフで斬りつける?
 確かにヴァンパイアには、銀の武器が有効とする話はよく聞くけれど……しかし、大抵の生き物は金属製の武器で攻撃されたらひとたまりもない気がする。
 あ、ヴァンパイアは銀以外の物質では、傷を負わないんだっけ?
 ……没。
 私は銀で出来た武器なんて持ってないし、もし銀のナイフなんて小洒落た物を持っていても、アレに当てられるとは思えない。
 もっとリーチと当たり判定が大きく扱い易い、そんな物が良い。
 私は前に漫画で読んだような、格好良くヴァンパイアを狩る専門家なんかじゃないのだから。
 普通の人間に、出来る事と出来ない事。
 分を弁えなければ、私は奴等の餌としての立ち位置から動く事が出来ないに違いない。
 う〜ん、そうなると──これなんか使えそうかな?
 …………。
 わあ、大樹ちゃんと読んでるじゃない!
 ひょっとしてバレてるのかなあ?
 いやいや、今はそんな事を言ってる場合じゃないよね。
 まずは今夜を無事に生き延びる事、それが最優先。
 私は手早くそれを束ね、棒状に形を固定した。
 ぽんぽん、と左手に打ち付けてみる。
 ……うん、固い。
 これならいくら吸血鬼といえど、力一杯叩けば何とかなるに違いない──はず。
 勿論、命中すればの話だけれども。
 武器か……
 道具を作り出し、それを扱う。
 これは地球上で、間違いなく人類が最も優れている能力に違いない。
 現に私は大樹の部屋にあった物で、吸血鬼を殺せる武器を作り出してしまった。
 意外と何とかなっちゃう物だよね。
 凄いぞ、由加!
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