涙のスイッチ
初めて見る迪也くんの表情は。


怒っているようで、でも、どこか哀し気で。


あたしは言葉を探してみるけど、今の迪也くんに届く言葉が見つからない。


たった1時間のカラオケが。


こんな展開になるなんて、思ってもみなくて。


「迪也くん…」


迪也くんは固い表情のまま、何も言ってくれない。


「…ごめんなさい」


「はぁー…。いや、美和が謝る事ないよ。オレが勝手にジェラっただけ。新しい学校だもんな。ちゃんと美和も馴染んで友達作らなきゃだよ、な」


「でも、ホントにあたしは迪也くんに会いたかったから…!」


「だからちょっと顔出してオレんトコ来てくれたんだろ?もう、いいよ。な、それより、美和、メシ食った?」


「ううん。まだ」


「じゃ、どっか食いに行こう。ココ、門限7時までなんだ。それまで、ちゃんとゆっくり美和と向き合いたいから。なっ?そんな顔すんなって」


「うん…。ホント、ごめんね?迪也くん…」


「さて、何食うかなっ」
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